2007年度第2回研究会
ベトナム・ラムドン省に居住する異民族間の通婚関係
――その歴史と新たな通婚関係の成立

本多 守 さん(東洋大学社会学研究科博士後期課程)

□ 日時 2007年5月21日(月) 18:10〜19:40
□ 場所 東洋大学白山校舎 5101教室

□ 要旨  報告者の調査地であるラムドン省には、主に8民族(キン族、コホー族、マー族、ムノン族、チュルー族、ラグライ族、スティエン族、華人)が居住する。
 この8民族のうち、キン族、華人とマー族を除いては母系制社会を形成し、妻方居住を基本としている。一方、キン族、華人、マー族は父系制社会を形成し、夫方居住を基本とする。報告者はラムドン省に居住する少数民族マー族、コホー族≪チル集団≫の研究をしているが、その調査地では、この異なる社会を形成する成員同士の通婚がみられる。
 特に革命後に増えてきたのが支配民族であるキン族と妻方居住を原則とする母系制社会を形成する少数民族間の婚姻である。この婚姻には二つのケースがある。それは支配層で行政機関に所属する者同士の婚姻と、北から計画移民、あるいは自由移民で南部にきたキン族と婚姻するケースである。そしてこの場合、前者はキン族が女性でキン族と少数民族が同じ職場であり、後者はキン族が男性で貧しい土地なしの移民である。前者の場合は、母系制社会で婚出しなければならない男子が、キン族の女性を娶り独立するケースであり、さほど違和感はない。しかし、後者の場合は貧しい農村の多子の家庭に生まれた男子が、母系制社会の女性と結婚して妻方居住をするケースである。発表者は、これら異なる社会を形成する民族の成員同士の婚姻の歴史と成立要因を明らかにし、その影響を明らかにする。

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