2009年度第4回研究会
漁村の高齢者とその役割
――高齢海女や漁師が働く意味――伊豆・下田市須崎地区の高齢者労働の事例より

齋藤典子さん(静岡県立静岡西高等学校(日本史)、清水東高等学校(小論文)非常勤講師)

□ 日時 2009年11月16日(月) 18:10〜19:40
□ 場所 東洋大学白山校舎 5401教室

□ 要旨
  本発表は、伊豆半島の海村・下田市須崎地区に住む漁民高齢者男女が日常行う労働が高齢者自身や家族、あるいは漁民社会にどのような役割をもたらしているのかを考察するものである。本発表で取り上げる伊豆半島は、明治期以降、昭和50 年代まで、およそ50 箇所で海人による貝の採取やテングサの採藻漁が行われてきた。近年、海女の高齢化や後継者不足から、多くの地域で海女によるテングサ漁が終焉を迎えている。しかし、高齢化率32%を超える超高齢社会の下田市須崎地区では、今も70,80 代の後期高齢者・海女によるテングサ漁が続けられている。さらに、テングサ漁を終えた冬季は、夫とエビ網漁を行う。つまり、70 歳を超えても夫婦ともに現役の漁師や海女として、海で働き続ける。なぜ、須崎地区の高齢者は高齢になっても働き続けるのか。高齢者が働く理由は、経済的な要因や「生きがい」などの個人的理由に依拠するだけであろうか。須崎地区の高齢者漁民労働のフィールドワークを通して、明らかになったのは、地域の伝統的な漁民としての働き方が男女ともに体系付けられていることである。その背景には、地域の共有資源である共同漁場の利用というローカルコモンズの概念がある。本発表では、高齢者労働の背景、目的、役割、影響を地元に残る近世史料を用いながら考察を深めてみたい。

□ 発表者略歴
 2009年9月 名古屋大学大学院文学研究科比較人文学文化人類学科博士後期課程満期退学
 日本文化人類学会、日本民俗学会、日本老年社会学会所属
 元 静岡新聞社 営業局 編集記者

白山人類学研究会世話人
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