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2011年度第1回研究会 |
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カンボジアでベトナム人として生きること 法的立場および「不当な」料金徴収をめぐる試論
松井生子 さん(国立民族学博物館外来研究員)
□ 日時 2011年5月23日(月) 18:10〜20:00
□ 場所 東洋大学白山校舎 5304教室
□ 要旨
カンボジアにおいてベトナム人は、ベトナムとカンボジアの支配−被支配の歴史、文化的な違い、経済的な競合、国民国家形成に伴う他者の創造などを背景に、多数派民族であるクメール人を脅かすものとして範疇化され、同国の社会の外部者として捉えられてきた。本報告が取り上げるのは、この他者認識のもとで、カンボジアの地方行政関係者によってベトナム人が法的に外国人として扱われ、また「不当な」料金徴収の対象とされているという事象である。
ベトナムとカンボジアの国境地域に位置する調査地には、カンボジアに数世代にわたって生活してきたベトナム人が居住している。これらの人々は1970年代前半の内戦時にベトナムへと避難し、ポル・ポト政権時代が終わった1979年以降に調査地に戻って来たという経験を持っている。
彼らの大半はカンボジアの国籍/市民権を持たず、その要件を満たしていても国籍/市民権をあらわすIDカードが交付されていないことがある。また、彼らは漁や家の新築をおこなう際に、ベトナム人であることを理由として、クメール人であれば課されることがない「不当な」料金を地方行政関係者から徴収されている。現在の調査地において彼らはベトナム人同士のつながりやクメール人との関係の中で自らをベトナム人として同定するが、このような地方行政関係者との接触もまた、クメール人とは異なるものとしての彼らの自己認識の契機となっている。ベトナム人に対する差別的処遇は、彼らの「ホーム」となりうるベトナムへの想像力を喚起するものでもある。
本報告はこの国籍/市民権と「不当な」料金徴収の問題を手がかりに、ベトナム人がカンボジアで置かれた不安定な立場の状況を示すと共に、同国で排除と収奪の対象となることによって形成される彼らの自意識と、カンボジアとベトナムの間での自己の定位の仕方を考察する。
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