2011年度第2回研究会
バティックに染め上げられる「華人性」
ポスト・スハルト期インドネシアの華人と文化表象をめぐって

津田浩司 さん(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 助教)

□ 日時 2011年6月20日(月) 18:10〜20:00
□ 場所 東洋大学白山校舎 5304教室

□ 要旨
  インドネシアに暮らす華人系住民(以下「華人」)は、新生国家インドネシアの中で長らく国民統合上の「問題」と位置づけられてきた。とりわけ1960年代後半から30年あまりにわたって続いたスハルト体制下では、「同化政策」の名のもと、公の場で彼らの「伝統」や「文化」を表出することは厳しく制限されてきた。
 1998年にスハルト体制が崩壊して以来、こうした華人を取り巻く空気は大きく改善の方向に向かってきている。文化表象の面においても、華人はジャワ人やバリ人など他のエスニック・グループと同様、己の独自性を主張したり表現することが、社会的にも政治的にもかなりの程度許容されるようになりつつある。
 そこで本発表では、インドネシアにおける華人とその文化の位置づけの近現代史を概観した上で、ポスト・スハルト期のインドネシア華人の文化表象のあり方をシンボリックに示すものとして、バティック(蝋けつ染めの布、ジャワ更紗)の上に「華人にまつわる要素」を盛り込もうとしている、中ジャワと西カリマンタンで現在進行中の2つの事例を報告する。「インドネシア文化の精華」として内外から高く評価を受け注目度を増しているバティックの上に、いわゆる「華人性」を盛り込もうとする試みが、それぞれ誰によっていかなる経緯でなされたのか、それが社会的にどのように評価されているかを分析することを通して、現代インドネシアにおける華人にまつわる文化表象のあり方の特徴を浮かび上がらせる。また、両事例で盛り込まれた「華人性」とはいかなるものであったかを見ることで、華人と「華人性」の関係性についても考察をする。



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