2019年度第2回白山人類学研究会
アフリカ牧畜民女性のライフコースの多様化――伝統規範にしばられず、開発ディスコースにもおどらされずに生きる術

中村香子さん(東洋大学准教授)

□日時 2019年6月24日(月)18:15〜
□場所 東洋大学白山キャンパス 8305教室(8号館3階)
       (地下鉄東京メトロ本駒込駅、または都営地下鉄白山駅)
       http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html        
□要旨
 社会が急速に変容している現代アフリカにおいては、女性のライフコースも激変を迫られている。学校教育の普及とともに、出産年齢があがり、多くの社会で繁栄や豊かさの象徴であった多産に対する価値観も変容しつつある。近年、その勢いを増す「ジェンダー平等の実現」を目指す取り組みによって、従来の結婚の形態は「児童婚」「強制婚」とカテゴライズされ、処罰の対象となった。また、結婚や出産とのつよい関連のもとで実施されてきた女子割礼・女性性器切除(FGM/C)という慣習に対しては、その根絶に向けて世界規模の取り組みが強化されている。
 本発表では、発表者が1998年から現地調査を継続しているケニアの牧畜民サンブルの社会を事例としてとりあげる。この社会では、一夫多妻の家父長制のもとで性別と年齢にもとづく徹底した分業体制がとられており、政治・経済・宗教に関するあらゆる権限が年長男性に集中してきた。すなわちサンブル社会は、「ジェンダー不平等」を社会・文化の構造に強固に埋め込んできた「長老制社会」であった。このような社会で、女性のライフコースはどのように変容しているのだろうか。本発表では、現地調査によって得た資料を紹介しながら、従来の厳格な社会規範と、近年に浸透してきた強力な開発ディスコースとのあいだで、女性がみずからのライフコースに関して多様な選択肢を創出しながら、主体性を獲得してゆくプロセスの一端を明らかにする。







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