2022年度第3回白山人類学研究会(オンライン開催)

現代イランにおける国家と宗教の緊張関係――ホセイン追悼儀礼の事例から



谷 憲一(上智大学アジア文化研究所・共同研究所員)

□日時:2022年6月20日(月)18:15〜 (オンライン開催)

 今回もWebex meetingsを利用してオンラインで開催します。
 参加ご希望の方は以下のフォームからご登録ください。
 アクセス用のリンクについては、例会前日までにご連絡差し上げます。
 https://forms.gle/1K5KCQXPZMjh26mb8
 開始の5〜10分前にログインしてください。


□要旨

 本発表の目的は現在イランで行われているホセイン追悼儀礼の実践を詳細に検討することを通じて、イスラーム共和国の統治体制において国家と宗教の関係がどのようなものであるかを考察することである。シーア派の人々の間で伝統的に行われてきたホセイン追悼儀礼は、1979年のイラン革命以後、国家による国民の動員手段としても機能するようになった。本発表で提唱するのは、この儀礼を、国家によるイデオロギー装置とみなす道具主義の観点と、人々や国家を包含する宗教的な議論の積み重ね(言説的伝統)の観点とを相互に往復する立場から捉えることである。具体的な事例として、胸叩き儀礼、カルバラー巡礼や自傷儀礼についてフィールドワークを通じて収集したデータを中心に据えながら、それぞれ音文化の規制、国民国家の外縁を超える共同性、言説による支配を超越する身体実践というトピックから議論し、儀礼がつくりだす共同性と国民国家による人々の直接統治の間で緊張関係がみられるとともに、儀礼を言説に基づいて抑え込もうとする国家/宗教権威と、それを逃れる身体実践の間での緊張関係がみられることを指摘する。最後にそれぞれの議論を横断的にまとめ、現代イランにおける宗教儀礼の動態的なあり方のモデルを提示する。

白山人類学研究会世話人
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