2022年度第4回白山人類学研究会(オンライン開催)

現代日本で主流な生き方を拒否することの意味――三つのオルタナティブな教育実践を行う高校の事例から



平野 邦輔(東京経済大学 特任講師)

□日時:2022年7月11日(月)18:15〜 (オンライン開催)

 今回もWebex meetingsを利用してオンラインで開催します。
 参加ご希望の方は以下のフォームからご登録ください。
 アクセス用のリンクについては、例会前日までにご連絡差し上げます。
 https://forms.gle/To7CfbbYgN2XLd6v9
 開始の5〜10分前にログインしてください。


□要旨

 本発表は、三つのオルタナティブな教育実践を行う高校での参与観察を元に、日本の教育の多様性と、その場での学びや生活がいかに生徒や教師、保護者に語られているのかを分析する。調査対象は生徒を罰する校則を一切作らない全日制普通高校、コリア系のインターナショナルスクール、そしてオンラインでほぼ全ての科目学習を個人で行わせる学校である。これらの学校は、日本のメインストリーム教育によって再生産される知識や行動規範といったものに対するアンチテーゼとしての選択の幅を広く示している。
 三つの学校のカリキュラムや教育哲学はそれぞれが日本の社会・文化規範への拒否を異なる形で示している。一方で、学校側がカリキュラムの独自性を追求しようとしても、現実問題としては不登校経験のある生徒をいかに学校生活に参加させるのかといった点にまず対応しなければならない。これらの学校では、オルタナティブな教育の価値は、カリキュラムの特殊性といった点もそうであるが、権威主義的ではないコミュニケーションの方法と、学校での親密な関係性の形成にあると語られていた。日本で上記のようなオルタナティブスクールに行くということは、日本社会の価値基準から完全に自由になるというよりも、一度「失敗」したのちに、あくまで新たな教育の場における文化規範を身につけ、そこで生活しているかどうかを試みるセカンドチャンスの場と言えるのではないだろうか。フィールドにおいても、「普通の学校」は比較対象として語られることが多く、教育選択においてメインストリームを拒否することは、すなわちメインストリームな制度や規範からの自由を意味しなかった。このことから、本発表では現代日本では教育選択においてメインストリームとは異なるものを選んだとしても、それは主流な教育や社会からのabjection(元の社会や文化から弾き出され、別個の存在となること。Kristeva 1980)を意味せず、あくまで「普通」をどこかで意識しながらも自己の生存方法を模索していくプロセスではないかという点について論じる。

  本発表は以下の論文の内容を基にしている。Kunisuke Hirano (2021) Educated to Participate: Interaction and Imagination in Three Alternative High schools in Contemporary Japan. Unpublished doctoral dissertation. University of Michigan.


白山人類学研究会世話人
代表:長津一史
運営委員: 左地亮子 ゴロウィナ・クセーニヤ 山田香織 
波佐間逸博 田所聖志
お問い合わせは、研究会事務局hakusanjinrui=gmail.com(=を@にかえてください) まで。
東洋大学社会学部国際社会学科 〒 112-8606 東京都文京区白山5-28-20 TEL 03-3945-7439 FAX 03-3945-7626
Copyright 2021 (c) Department of Global Diversity Studies, Toyo University.
All Rights Reserved. 無断転載を禁ず