2022年度第6回白山人類学研究会(オンライン開催)

「辞める」という選択を引き受ける―現代ベトナム都市の高学歴女性にみるキャリア実践


伊藤 まり子(京都外国語大学 )


□日時:2023年1月23日(月)18:15〜 (オンライン開催)
 
 参加ご希望の方は下記のフォームからご登録ください。
 アクセス用のリンクについては、フォーラムの前日までにご連絡差し上げます。
 https://forms.gle/MC3qyxv8F7sCGWWM9
 開始の5〜10分前にログインしてください。


□要旨
 
    昨今の人類学が注目するトピックのひとつに、「仕事」/「労働」概念の再検討がある。これは、戦後の日本社会が、復興と社会基盤づくりに邁進し、ひたすら経済成長を追いかけた一方で、個々の生き方に生じる矛盾や問題から目を逸らしてきた結果として顕在化している様々な「歪み」へのアンチテーゼであり、そうした「歪み」、すなわち戦後から高度経済成長期にかけて構築された社会構造と多様化する個々の生のコンフリクトのはざまに浮かび上がる様々な問題を照射するためには不可欠な議論といえる。本発表は、この議論の延長線上にある。すなわち、「女性の活躍」や自己実現としての「キャリア」について問うことが目的である。  研究対象地であるベトナムは、共産党一党体制の社会主義国である。その政治思想を一瞥すると、男女の労働の権利が平等に担保されているイメージが浮かぶかもしれない。確かに女性はソトで働くことが当然視され、その就業率も女性人口の70%以上に上る。他方で本発表が扱う事例の出身地ベトナム北部地域では、父系原理が理念とされ、また儒教的家父長制を背景とする女性の従属が繰り返し議論されてきた。すなわち女性は結婚すると夫方親族の一員となり、ヨメとして家事や育児、夫の老親のケアの担い手となることが当然視されると同時に、婚出したムスメは、実家に対する支援も期待され、結果として双方の家族、親族に対する女性の負担が大きいことが指摘されている。有償労働すること、家族への献身、双方の役割を課せられるベトナム女性たち、そして社会は、女性の「キャリア」をどのように捉えているのだろうか。ここでは、ベトナム人高学歴女性の事例を通じて検討を試みたい。


白山人類学研究会世話人
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