2023年度第1回白山人類学研究会(オンライン開催)

「女らしさ」が生成する場──フィリピン、マニラ首都圏の日本人男性向けカラオケパブの労働誌



田川夢乃(東洋大学・助教)

□日時:2022年4月24日(月)18:15〜 (オンライン開催)

 今回もWebexミーティングを利用してオンラインで開催します。
 参加ご希望の方は以下のフォームからご登録ください。
 アクセス用のリンクについては、例会前日までにご連絡差し上げます。
 https://forms.gle/MC3qyxv8F7sCGWWM9
 開始の5〜10分前にログインしてください。


□要旨

 要旨:男女平等やジェンダー多様性を実現するための取り組みが盛んに行われるようになった現代社会では、「男らしさ」や「女らしさ」といったジェンダー概念に対する見方は大きく変化した。それらのなかには性差に基づく固定観念から脱し、「自分らしさ」を称揚することで女性のエンパワーメントを促す動きもある。そうした見方には、男性に頼って生きようとする「旧来的なジェンダー観の女性」が自らの足で立ち上がれるよう自立を促すことでエンパワーメントしようとする試みがある。しかし、液状化と流動化が進む現代社会において、そのような自立した明確な自己を求めることは容易なことではない。不安定な「個性」は、ネオリベラルな能力主義の論理に絡め取られてしまう危険性を持つ[菊池 2019]。 他方、「女らしさ」を装い振る舞うことを仕事とする人びとがいる。とりわけ、セックスワークや接待飲食業といったナイトワークに従事する女性たちは、男性が期待し価値づける女性像を演じ、時にそうした価値観を内在化して表出することで生計を立てている。彼女たちは、男性の性的欲望を掻き立て、男性との間に愛情や親しみの関係を構築することで対価を得る。そのような人びとは、固定的な「女らしさ」に追随するしかない脆弱でかわいそうな人びとなのだろうか。あるいは、女性のエンパワーメントを阻害する、教育や矯正が必要な人びとなのだろうか。 本発表は、以上の批判的見方のもと、フィリピン、マニラ首都圏の日本人男性向けカラオケパブを事例に、異性愛規範を前提とする空間で「女らしく」振る舞うことの意味を労働現場の実態に即して検討する。ここでは特に「パフォーマティヴィティ」をキー概念として、そこに第三世界のフェミニズム論を接続することで、現場における「女らしさ」の生成を複数性と日常性の観点から分析する必要性を示す。これを通して、ジェンダーを「複数の権力関係のもとに生成する状況」として描き出すことが本発表の目的である。

白山人類学研究会世話人
代表:長津一史
運営委員: 左地亮子 ゴロウィナ・クセーニヤ 山田香織 
波佐間逸博 田所聖志
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