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2023年度第4回白山人類学研究会(対面・オンラインハイフレックス方式) |
海を「視る」技術:インドネシア・バンガイ諸島サマ人の漁撈と環境認識
中野真備(人間文化研究機構・東洋大学)
日時:2023年7月10日(月)18:15~ (対面・オンラインハイフレックス方式)
要旨
本発表の目的は、インドネシア・バンガイ諸島サマ人の漁撈における環境認識の構造を、海上景観に基づく空間認識や民俗分類から描き出すことである。
海や森などの自然環境を生業・生活の場とする人々は、安全かつ効率的に自然環境を利用できるようにその知識や技術を習得、適応してきたが、これらは人々の自然観や環境認識を基盤としつつ複雑に形成されてきた。
本発表で対象とするサマSamaあるいはバジャウBajauとよばれる人々(以下、サマ人)は、フィリピン南部、マレーシア・サバ州、インドネシア東部を中心に東南アジア島嶼部3ヵ国にまたがって拡散居住する海民集団である。
サマ人については、歴史的形成過程や社会的側面に焦点が当てられて論じられてきたが、漁撈活動や環境認識にする実証的研究はサンゴ礁や汀線帯を実践空間とする一部の事例に限られる。
彼らが多様な沿岸環境を有する東南アジア島嶼部に分散していることや、定住化を経て生業・生活環境が変化してきたことを考慮すると、これはサマ人の環境認識を代表するとは言いがたい。
自然環境の認識を分析する主たるものに民俗分類学的手法が挙げられるが、ここでは生物や自然物(無機物を含む)、空間がそれぞれ独立して取り出される傾向があり、また対象空間の生態学的・地理的条件にも偏りがあるため、漁撈における環境認識の総合的理解には限界があった。
そこで本発表では、浅海~外洋域で漁撈をおこなうバンガイ諸島サマ人漁師らの環境認識について、漁師らによる海上移動の景観に基づく、生物・自然物・空間の民俗分類の絡まり合いに着目して分析することで、彼らの海を「視る」技術について考察しようとする。
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