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2024年度第4回白山人類学研究会(対面・オンラインハイフレックス方式) |
近代スポーツがケニア都市部の低所得層の若者にもたらしたもの
-富裕層とのネットワークの活用と再編-
萩原 卓也(東洋大学)
日時:2024年7月22日(月)18:15~ (対面・オンラインハイフレックス方式)
要旨
ケニアにおいても近代スポーツへの参加者が増加し、競技アスリートを含む実践者とそれを取り巻く支援者で構成される社会集団が形成されるようになった。そのような集団がどのように維持され、また引退後はどのような生活を営んでいるのかを研究調査することは、近代スポーツと人間社会のかかわりを検討するうえで欠かせない。
本発表では、競技生活から離れたケニアの元自転車競技選手が、競技時代に培った技能や富裕層とのネットワークをいかに活用・再編しているのかに注目する。そこで浮き彫りになってくるのは、特定の分野に注力するのではなく、重心を置きつつも周囲の需要に応じて自転車の整備や修理、サイクリングツアーのガイドなどをスポット的かつ身軽に展開していく彼らの姿である。さらに興味深いのは、アスリート的な「ディシプリン」を保持していない富裕層の身体の変革を図っていく実践も見受けられることである。このような事例から、競技生活をとおして低所得層の若者が得たものや、当該地域における自転車競技団体そのものの位置づけを考えたい。
発表者は、首都ナイロビ郊外に拠点を構える自転車競技選手育成団体Sにおいて、2013年より彼らと共同生活を営みながら、約7,500キロの距離を彼らとともに走ってきた。この団体は低所得層の若者たちをプロの自転車競技選手へと育成することを目標に掲げるとともに、ケニア社会を生き抜くために彼らを自律/自立させることも目指している。団体Sの特徴のひとつは、富裕層コミュニティとの密接である。ケニアの都市部では、中間層・富裕層の増加、環境問題や健康維持への意識の高まりが相まって、サイクリング人口が増加している。競技用自転車の整備や修理には特別な工具や技術が必要である。ケニア国内でサイクリングを楽しみたい観光客には、その土地に精通した地元のツアーガイドが不可欠である。このような需要に応えながら、彼らは引退後も富裕層とのネットワークを活用・再編していく。本発表では、2023年2月~3月、2024年2月~3月にかけて実施したフィールドワークのデータをもとに報告する。
※本研究会は、人間文化研究機構海域アジア・オセアニア研究(MAPS)東洋大学拠点との共催です。
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