2024年度第5回白山人類学研究会(対面・オンラインハイフレックス方式)

ミナンカバウの一村落における高齢者の暮らし─25年前の事例



西廣 直子(東洋大学)

日時:2024年10月21日(月)18:15~ (対面・オンラインハイフレックス方式)

 
要旨

  本発表は、修士論文「インドネシアにおける高齢化と高齢者の現状―ミナンカバウの事例―」をもとにした、調査村の高齢者の暮らしについての事例報告である。
 発表者が調査した当時(2000年)のインドネシアの65歳以上人口の割合は全国平均で4.5%であったが、西スマトラ州(ミナンカバウの故地)は6.52%であった(BPS他)。調査地は10.3%であり、地域によってはすでに当時から高齢化が進んでいたことを明らかにした。一方出生率はそれほど低下しておらず、ミナンカバウの慣習である「ムランタウ(出稼ぎ)」が高齢化の一因として考えられた。
 母系制社会ミナンカバウは、かつて男子は10歳になると生家を離れることが求められた。富や名声を得て「故郷に錦を飾る」のが良しとされたが、時代と共に学問のためのムランタウや、女性のムランタウも珍しくなくなり、ムランタウ先に家族ぐるみで移住する「ムランタウ・チナ(merantau cino)=中国風ムランタウ」が一般的になった(加藤、1983)。調査村も例外ではなく、過疎化も進み、「以前なら考えられなかった」という女性の1人暮らしや夫婦のみの世帯も全世帯の3割あった。
 本発表では、1人暮らし高齢者、夫婦2人暮らし、家族と同居の3パターンを取り上げ、参考までに近隣の老人ホームの事例も報告する。25年前のミナンカバウ村落の実態を把握し、その中で見えてきた過去(当時よりも過去)の高齢者の暮らしを参考にしながら、「高齢者扶養」の視点でミナンカバウの母系社会を見る可能性を探る。
※本研究会は、人間文化研究機構海域アジア・オセアニア研究(MAPS)東洋大学拠点との共催です。

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